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第26章 HTMLはどこへ向かうのか

この章では、HTML の未来を新機能予想の一覧としてではなく、完成しない仕様がどのように進み続けるのかという形で見ます。ゴールは、HTML を「古いが残っている技術」から、「今も調整され続ける公共基盤」として見直すことです。

前章では、HTML がなぜ長生きしたのかを、後方互換性、オープン性、シンプルさの観点から見ました。この最終章では、その長寿がどのような未来の持ち方を可能にしているのかを扱います。ここで説明するのは個別機能の予想ではなく、変化の様式です。

26.1 HTML は完成を目指すより、調整を続ける

HTML は Living Standard として少しずつ更新され続けます。大きく一気に作り直されるのではなく、実装と利用実態に合わせて手当てされる。この進み方は派手ではありませんが、壊せない基盤としてはかなり合理的です。完成を宣言するより、継続的な保守と調整を前提にしたほうが Web の現実に合っています。

この本で見てきた補完、エラー回復、互換性、再定義、標準化の仕組みは、どれも「完成した仕様を守る」というより、「壊さずに調整し続ける」という性格の表れでした。HTML は、ある日きれいに作り直されるより、現実に合わせて少しずつ直され続けるほうが自然な技術です。

26.2 未来は革命より、接続と手当ての積み重ねになる

今後も HTML は、アクセシビリティ、フォーム、埋め込み、周辺 API との接続といった領域で変わり続けるでしょう。ただし、その変化の多くは「新しい HTML を別に作る」ことではなく、既存の基盤へどう接続し、どこを手当てし、何を明確化するかという形で起きます。

これは目立たない変化に見えますが、Web の規模を考えれば必然です。世界中の文書、ツール、ブラウザ、利用者が同じ基盤の上に乗っている以上、劇的な断絶より、小さな調整の積み重ねのほうが現実的です。HTML の未来が派手な革命に見えにくいのは、停滞しているからではなく、壊せないものを変えているからです。

26.3 変わり続けること自体が、HTML の一貫した性格である

本書で見てきた奇妙さの多くは、場当たり的な混乱の跡であると同時に、適応の痕跡でもありました。tbody の自動挿入も、p の自動終了も、古い要素の再定義も、Living Standard も、全部ばらばらの話ではありません。壊せない過去と、変わり続ける現在のあいだで折り合いをつける方法でした。

だから HTML の未来を考えるとき、次に何のタグが増えるか よりも、これからもどう折り合いをつけ続けるのか を見るほうが本質に近い。HTML は完成したから生きているのではなく、完成しないまま調整され続けることで生きています。

26.4 HTML は変な技術ではなく、筋の通った公共基盤だった

この本の出発点は、HTML の不思議を「変だから面白い」で終えないことでした。ここまで読んできて、もし HTML が偶然の寄せ集めではなく、公開性、互換性、実装、利用者の現実のあいだで折り合いをつけてきた技術だと見えたなら、本書の役割は果たせています。

HTML は変な技術だった、ではなく、変わり続ける公共基盤だった。しかも、その変化には一応の筋があった。そう捉え直せるなら、これから HTML を見るとき、何が追加されたかだけでなく、なぜその変化がその形で起きたのかも一緒に見えるはずです。

参考資料